「この作家のように書いて」。ChatGPTにそう頼んでも、以前のようには応じないケースが増えている。
利用者の報告によると、特定の作家名を挙げて文体の再現を求めると、断られることがある。ただし、文章を書く手伝いそのものができなくなったわけではない。
「短い文で」「静かな町を舞台に」「少しずつ不安が広がる話にして」。そんなふうに希望を伝えれば、物語作りには応じる。
これまでなら、「スティーヴン・キング風に」「ヘミングウェイのように」と一言添えるだけで済んだ。これからは、どんな文章にしたいのかを自分の言葉で説明する必要がありそうだ。
背景には、作家の作品と生成AIをめぐる議論がある。
生成AIは、大量の書籍やインターネット上の文章を学習に使ってきた。作家や出版社からは、自分たちの作品が知らないうちに利用され、よく似た文章まで作られてしまうことへの不安が出ている。
文体は、線を引きにくい。短い文章も、乾いたユーモアも、一人の作家だけのものではない。それでも、名前を入力するだけで、その人らしい文章が出てくることに違和感を持つ作家は少なくないだろう。
長い時間をかけて身につけた書き方が、便利な機能のように扱われる。その気持ちは想像しやすい。
利用者には少し手間が増える。それでも、自分が好きなのは作家の名前なのか、文章のテンポなのか、物語の空気なのかを考えるきっかけにはなる。
ChatGPTはこれからも文章作りを手伝う。ただ、「誰かのように書く」より、「自分は何を書きたいのか」を先に聞く道具へ変わりつつある。