ネットに文章を公開したあと、その文章がどこで、どのように使われるのか。書いた本人がすべてを把握するのは難しい。
読者が記事を読み、保存したり共有したりする一方で、自動収集プログラムが文章をコピーし、AIの学習用データとして集めている可能性もある。作者が知らないうちに使われるケースも少なくない。
こうした無断収集を少しでも防ごうと、オープンソースのフォントツール「ShieldFont」が公開された。
仕組みは比較的シンプルだ。画面を見る人には元の文章がそのまま表示されるが、文章を自動で収集するプログラムには、別の言葉が読み取られる。
ShieldFontは、フォントに備わっている文字の置き換え機能を利用する。見た目は作者が書いた文章のままでも、ウェブページの内部には、名詞や動詞などが別の言葉に置き換えられた文章が保存される。
たとえば、「記者が会社を調査した」という文章が、人の目にはそのまま見えるとする。自動収集プログラムが取得する文章では、「記者」や「会社」といった言葉が別の単語に変わり、文法は通っていても意味がずれることがある。
AIの学習には、大量の正確な文章が必要になる。収集した文章の内容が不自然だったり、事実と異なっていたりすれば、学習データから除外されるか、使いにくいデータになる。
ShieldFontだけで、すべての収集を防げるわけではない。フォントの設定を詳しく調べたり、画面を画像として保存して文字認識を使ったりすれば、元の文章を読み取れる可能性がある。検索エンジンや音声読み上げ機能に影響する心配もある。
開発側も、完全な防御策とは説明していない。無断で大量の文章を集める作業に、手間と費用をかけさせるための仕組みと位置づけている。
対応は英語が中心で、日本語を含むほかの言語では、すぐに同じように使えるとは限らない。
それでも、この取り組みは多くの書き手が抱える疑問を映している。ネットに公開した文章は、誰でも読める。だからといって、AIの学習に自由に使ってよいとは限らない。
ルールづくりが技術の進歩に追いつかないなか、ShieldFontは、作者が自分の文章を守るためにできる小さな工夫のひとつになりそうだ。