Mistral Medium 3.5

2.35
フランスのAI企業Mistralは、OpenAIやAnthropicとは少し違う立ち位置を取ってきた会社だ。オープンモデルを積極的に出してきたこともあり、「欧州発の対抗馬」というイメージを持っている人も多いと思う。 Mistral Medium 3.5を触ってみて感じたのは、その狙いがかなり絞られてきたことだ。
Advertisement 728 × 90
会社Mistral AI
コンテキスト262K
リリース2026-04
更新日2026-09-07

Mistral Medium 3.5 概要

Mistral Medium 3.5は、Mistral AIが2026年4月29日に公開したモデルだ。

パラメータ数は1280億。Denseアーキテクチャを採用し、最大256K tokensのコンテキストを扱える。

Mistralとしては初の「merged model」でもある。

指示追従、推論、コーディング能力がひとつのウェイトにまとめられているため、作業内容に合わせて別モデルや別checkpointへ切り替える必要がない。

対応範囲はかなり広い。

テキスト生成、コード生成とデバッグ、画像理解、Function Calling、ツール利用、複数ステップのAgent処理に対応する。日本語、中国語、フランス語を含む多数の言語も扱える。

モデルウェイトはHugging Faceで公開されており、修正版MITライセンスのもとで商用・非商用の両方に利用できる。

ベンチマークでは、

SWE-Bench Verified:77.6%
τ³-Telecom:91.4

という数字が出ている。

特にSWE-Bench Verifiedの77.6%はかなり高い。

「オープン系としては頑張っている」という評価ではなく、普通に上位のコーディングモデルと比べる段階に入った数字だ。

とはいえ、ここは少し割り引いて見たほうがいい。

SWE-Benchは実際のGitHub Issueを解けるかを見るテストだが、現場のリポジトリはもっと面倒だ。古い依存関係が残っていたり、設計が途中で変わっていたり、説明のないコードが大量に混ざっていたりする。

ベンチマークで解けることと、汚れた実コードを気持ちよく直せることは別の話だ。

自分としては、数ポイントのスコア差よりこっちのほうが気になる。

Mistral Medium 3.5 料金プラン

プラン価格説明
API入力 $1.50 / 100万tokens 入力token数に応じて課金
API出力 $7.50 / 100万tokens 生成token数に応じて課金

APIのコンテキスト上限は262,144 tokens。最大出力も262,144 tokensとなっている。

Claude Sonnet 4.6は入力が100万tokensあたり$3、出力が$15なので、Medium 3.5はだいたい半額だ。

DeepSeek-V4 Proの入力料金は約$1.74 / 100万tokensで、こちらのほうが価格帯は近い。

普通のチャットだけなら、この差をそれほど気にしない人もいると思う。

Agentになると話が変わる。

コードを大量に読み、ツールを呼び、ファイルを書き換え、テストを実行して、失敗したらもう一度やり直す。

これを何周かするとtokenはかなり増える。

その段階になると「Claudeの半額」というのは単なる価格比較ではなく、Agentを継続運用できるかどうかに関わる数字になってくる。

Mistral Medium 3.5 主な機能

1. 推論強度を変えられる:Highは強い。でも常用はしない

Medium 3.5ではreasoning_effortを設定できる。

"none"ならレスポンス重視。

"high"にすると、より多くの計算を使って問題を考える。

コードを書かせると、この違いはわりと分かりやすい。

補完や関数の説明、原因がある程度見えている小さなバグ修正なら、個人的にはLow寄りで十分だと思った。

Highにすると待ち時間は増えるが、毎回それだけ回答が良くなるわけではない。

逆に、複数ファイルにまたがる修正や依存関係の追跡になると、Highの価値が出てくる。

実際、複数ファイルにまたがる問題を試したとき、最初の段階ですでにエラー原因は見つけていた。

ところがHighではそこで止まらず、さらに一段深く依存関係を追い始めた。

最終的な修正は確かに良くなった。

でも、待ち時間もはっきり長くなった。

そこで少し腑に落ちた。

Highは必ずしも「急に頭が良くなる」モードではない。どちらかというと、「簡単には答案を提出しない」モードに近い。

難しい仕事なら、それが効く。

毎回必要かと言われると、たぶん違う。

2. 画像対応:単体では普通、コードと一緒になると便利

Medium 3.5は画像も直接扱える。

UIのスクリーンショット、フローチャート、数式が入った画像などを読み取れる。

ここだけを見ると、それほど驚きはない。

このクラスのAIモデルなら、画像対応はかなり一般的になった。

面白いのはコードと同じモデルで扱えることだ。

たとえばフロントエンド開発なら、完成イメージのスクリーンショットとコードを一緒に渡せる。

デバッグでも、エラー画面、構成図、関連ファイルをまとめて見せられる。

こうなると画像認識は独立した機能ではなく、Agentが状況を理解するための入力手段のひとつになる。

自分はこの使い方のほうがずっと実用的だと思う。

3. Function CallingとAgent:ここでMedium 3.5の狙いが分かる

Function Callingと構造化JSON出力に対応している。

256Kの長いコンテキストと組み合わせれば、コード、過去の操作、ツールの実行結果を残しながら長めの処理を続けられる。

Mistral自身もMedium 3.5をVibe Coding Agentで使っている。

CLIやLe Chatからクラウド上のコーディングセッションを開始し、コード変更、依存関係のインストール、テスト実行、Pull Requestの作成まで複数ステップで進められる。

ここで、このモデルの設計が急に分かりやすくなる。

256Kコンテキストは、Agentがコードと作業履歴を抱えるため。

reasoning_effortは、難しいステップだけ計算量を増やすため。

Function Callingは、モデルに外部ツールを触らせるため。

画像対応は、UIやスクリーンショットまで作業ループに入れるため。

ひとつひとつは珍しくない。

でも全部並べると、Mistralが考えていることはかなり見えてくる。

「Coding Agentが途中で崩れずに仕事を続けるには何が必要か?」から逆算して作った感じがする。

自分がMedium 3.5で一番面白いと思ったのは、ここだ。

4. Mistral Medium 3から何が変わった?

Medium 3からMedium 3.5への変化は、「3.5」という名前から想像するより大きい。

まず画像を扱えるようになった。

Medium 3は基本的にテキスト中心だったが、3.5ではネイティブの画像理解が入っている。

コンテキストも128Kから256Kへ倍増した。

普段のチャットでは128Kでも256Kでも大差を感じないかもしれない。

大きなコードベースや長いAgent処理を扱うと、この差が効いてくる。

指示追従、推論、コーディングもひとつのモデルにまとめられた。

さらに、Function Calling、ツール利用、長いコンテキスト、画像、コーディングが以前より自然につながっている。

SWE-Bench Verifiedも77.6%まで伸びた。

ただ、自分はこの数字より別の変化のほうが大きいと思う。

Medium 3は「コードも書ける汎用モデル」だった。Medium 3.5は「Coding Agentを作る前提のモデル」にかなり近づいた。

ここが一番の進化だ。

まとめ

良いところ

  • 128B Denseモデルで、コード・画像・推論・ツール利用をまとめて扱える
  • 256Kコンテキスト
  • 最大出力も約262K tokens
  • SWE-Bench Verified 77.6%
  • タスクに合わせて推論強度を変えられる
  • API料金はClaude Sonnet 4.6のおよそ半分
  • 公開ウェイトがあり、セルフホストできる
  • Coding Agent向けの機能がひとつのモデルにまとまっている

気になるところ

  • 無料API枠がない
  • 128B Denseは軽くない。セルフホストのハードルも高い
  • High reasoningにしても、待った分だけ必ず回答が良くなるわけではない
  • 256K入るからといって、大規模リポジトリの依存関係を全部正しく理解できるわけではない
  • 普通のチャットや要約だけなら、かなりオーバースペック

おすすめできる人

ソフトウェアエンジニア、Coding Agent開発者、ある程度規模のあるAIチーム、セルフホストやデータ管理を重視する企業。

特に、ツールを何度も呼ぶ長いコーディングAgentを作っているなら、ベンチマークを見るだけで判断せず、実際のリポジトリで一度試す価値はある。

Medium 3.5の良さが出るのは、たぶんそこだ。

おすすめしにくい人

コストを抑えたい個人ユーザー、無料のチャットAIを探している人、ベンチマークの最高スコアだけを重視する人。

自分がMedium 3.5で気になるのは、SWE-Benchの77.6%そのものではない。

実際のごちゃごちゃした開発タスクに入れたとき、間違った修正や無駄なツール呼び出しをどこまで減らせるか。人間が横で面倒を見る時間をどれだけ減らせるか。

そこまでできるなら、このモデルを選ぶ理由はある。

チャットだけなら、正直ここまでのモデルはいらない。

コメント(0件)

コメントを書く

Advertisement 728 × 90

類似モデル

GPT-5.5
99
GPT-5.5の第一印象は、チャットボットというより、仕事をそのまま渡せる同僚に近づいたということだ。 タスクを渡せば、自分で分解し、ツールを使い、結果まで確認する。
OpenAI
Claude Opus 5
97
Opus 5で気になったのは、ベンチマークの伸びより価格だ。最上位モデルに近い性能が、より現実的なコストで使えるようになった。 一方、数時間に及ぶ作業まで完全に任せられるかというと、まだ慎重に見たい。
Anthropic
GPT-5.6 Luna
97
速度・コスト効率・高性能を両立した、GPT-5.6 シリーズの高効率 AI モデル。
OpenAI
GPT-5.6 Luna Pro
96
OpenAI が開発した次世代の高効率 AI モデル。速度・コスト・性能のバランスに優れ、チャット、コード生成、自動化タスクなど幅広い用途に対応します。
OpenAI
GPT-5.5 Pro
96
ここ数週間、同僚と一緒にGPT-5.5 Proをかなり使い込んでみました。 使えば使うほど、評価が難しいモデルだと感じます。 能力だけを見れば、これまで触ってきたAIの中でも「仕事をそのまま任せられる相手」にかなり近いです。
OpenAI
Claude Opus 4.8
94
Claude Opus 4.8 は Anthropic の Opus シリーズ最強モデルで、マルチモーダル入力・推論・100万トークンのコンテキストを備え、複雑な推論とコーディングに優れています。
Anthropic
Gemini 3.8 Flash
93
今回のGemini 3.8 Flashは、数字以上に気になるアップデートだ。 Gemini 3.7 Flashが登場してから、わずか3週間。Googleはもう3.8 Flashを投入してきた。このペースだけでもかなり速い。
Google
GPT-5.6 Sol Pro
92
GPT-5.6 シリーズ最高性能モデル。高度な推論、複雑な課題解決、専門的な長時間ワークフローに対応。
OpenAI